褒めるよりも認める関わり

褒めると認めるの違い

最近、職場の人間関係を良くしていくために褒めることを取り入れている企業様があります。上司はもっと部下を褒めましょうと一生懸命取り組まれています。
 
確かに、褒められて嫌な気分になる方はあまりいないかもしれません。誰だって褒められたらうれしいものです。
しかし、褒めることはなかなかうまくはいきません。私も以前、お互いにいい部分を褒めあうというワークを研修で行っていました。中には、普段の生活でも褒められたことがないため本当に嬉しかったと涙ぐまれていた男性は印象的でした。
 
ただ、中には相手から褒められても、どこか納得のいかないような、苦笑いしているような表情をされている方も多いことに気づきました。
 
また、褒める側もなかなか褒められず、どうしていかわからなくなっている方もいらっしゃいました。
 
どうしてこういうことが起こってしまうのでしょうか
 
そもそも、褒めるということは、評価して、そのことを言う。
ということです。
優れていると「評価する」のです。
”評価”が入るのです。
褒める側の価値観が入ってしまうのです。
 
褒める側の人間と、褒められる側の人間。
互いに別の価値観を持って生きているため価値観で関わろうとすると、どうしてもギャップが生まれてきてうまくいかなくなってしまうのです。
 
ある職場で毎朝一番最初に出勤し、自分の机の周りを整頓して、その日のスケジュールを立てて仕事に臨む男性がいました。
 
その様子を知っていた上司は、もっとその男性のモチベーションを上げようと思い、そのことを褒めようと声をかけました。
 
上司 : 「毎日、朝早くからえらいね、感心するよ!すごいな」
部下 : 「どうしたんですか急に、別に大したことはないですよ」
上司 : 「・・・」
 
上司は一生懸命に褒めたのですが、部下の反応はいまいち。
 
この部下にとっては、自分の行動は当たり前のことであったため、そのことを褒めてもらっても、心は動かなかったのです。心が動かないということは、モチベーションもあがりません。
また、褒めるとは、優れていることを評価することであるので、いい部分があったら褒めてもらえるけど、そうでなければ褒めてもらえないという条件が付いてきてしまいます。
では、認めることはどうなのでしょうか
認めることとは、目にとめる。存在を知覚する。気づく。正しいとして、また、かまわないとして受け入れる。
 
相手のありのままの事実を、そのまま受け入れるということです。そこに、伝える側の主観や評価など価値観が入らないのです。
 
先ほどの事例で言うと、
上司 : 「毎日朝から机の整理をして、計画的に仕事を進めているんだね」
これが、認める関わりです。
もちろん認める関わりは、本人ができていること、取り組んでいることなど、プラスの面を認めていく必要があります。

認められられた側は自分の存在を肯定的に認識でき、自己肯定感を持てるようになっていきます。
 
さらに、「○○ができるようになったね」など、以前との変化を認める関わりを持つと、相手は自分のことを点ではなく、線で見てくれていると感じ、より、深い信頼が生まれてきます。
相手との関係を築くには、褒めるより、認める関わりを持ってみましょう