どのようにスキルを上げていくか
キャリア・コンサルタントは「個人の人生に関わるとはどういうことか」を自問し、「個人の人生に関わっていくということ」を十分に理解するとともに、その責任の重要性を自覚し、絶えざる自己研鑽を積み、活動する。
キャリア・コンサルタントの行動原則より
特定非営利活動法人キャリアコンサルティング協議会
キャリアコンサルタントの資格をお持ちの方は、普段、どのように自己研鑽をされているでしょうか。技能士をお持ちでない方は、技能士の取得に向けて試験対策など行われているかもしれません。
上記のようにキャリアコンサルタントは、行動原則で絶えざる自己研鑽を行っていくことを求められています。目の前の相手の人生に関わる職のため、「そんなことわかっている!」とう方も多いかもしれないのですが、実際はどのようにスキルアップを行えばいいのでしょうか。
これからキャリアコンサルタントを目指そうと言う方も、もっとキャリアコンサルタントとしての技能を向上させたいと言う方も、今行なっているスキルアップの方法の参考になればと思います。今回は、次の3つについて。
- 研修受講
- 事例検討
- スーパーバイズ
研修受講
キャリアコンサルタントでなくてもスキルアップの手法で用いられるのが、研修の受講です。いわゆるoff-JTで、通常の業務外の集合研修や講習会で知識や技能を取得する方法です。一方的に情報を得る講話方式のものや、参加者同士でワークなどを通じ学び合う体験型のものまで様々な方法があります。
キャリアコンサルティング協議会に登録されている方は、メールマガジンの配信を希望していると、学習情報が配信されます。全国で開催される協議会や主催団体の研修の情報を得ることができます。
研修でのスキルアップは大きく分けて知識や技能の幅を「広げる」目的と、「深める」目的の2つに分けられます。キャリアに関する特定のテーマについて深めていくことも大切ですが、他分野を学ぶことで、知識や技能の幅を広げていくこともスキルアップには大変有効です。
最近では、相談者の主訴も単純ではなく、複数の課題を潜在的に抱えるケースが増えてきています。メンタルヘルスやハラスメント、介護、障がい、子育てや虐待など、相談対応には幅広い見立てが求められます。
そのためには、普段から他の分野へのアンテナを立てておくことと、他分野の専門家とのネットワークを築いておくことが求められます。研修での出会いはネットワークの形成の一つのきっかけになってきます。
<他分野の研修情報が得られる主な機関>
精神保健福祉センター、発達障がい者支援センター、人権センター、社会福祉協議会、NPOセンターなど
※地域によって名称は異なる場合があります。
<オススメの研修機関>
グループアプローチやチームファシリテーションなど、キャリアにも活用できる能力を学べる機関です。
事例検討
事例検討の方法はいくつかありますが、一般的には、事例提供者が持ってきた事例を進行役のファシリテートの上で、参加者で複数の視点から意見を交わし、相談者の理解を深めていきます。
私自身も何度か行なってきましたが、相談者の理解はもちろんのこと、自身のキャリアコンサルタントとしての見立て傾向の理解や、支援の幅を広げることができました。
事例の選定は、事例提供者が深めたい事例を持ってきます。現在関わっている進行中の事例や、関わりは終わっているが振り返ってみたい事例など、その時によって異なります。
事例検討を行う上で大切なことは、進行役の存在です。場を整理できる進行役が不在の事例検討は、事例提供者の対応の荒さがしや、事例の相談者への批判になってしまうなど、本来の事例検討の目的から外れてしまいかねません。
事例検討を行う際は、必ず、キャリアコンサルタントとしての経験があり、場を見て整理を行える方を進行役として入ってもらうことをお勧めします。
また、事例によっては、関連する分野の専門家の方にオブザーバーとして入っていただき、意見をもらうことも有効です。
スーパーバイズ
スーパーバイズとは、自分自身のキャリアコンサルティングの「やり方」について指導を受けることを言います。あくまでもキャリアコンサルティングのスキルについての指導であり、キャリアコンサルタントの人格や性格的な課題については基本的には扱いません。
もし、キャリアコンサルタント自身の課題等がキャリアコンサルティングに影響している場合は、スーパーバイズではなく、教育分析や、カウンセリングなど、別の場所で扱います。
よく例えて言われるのが、車の運転。スーパーバイズは、車の運転方法に対する指導であり、運転手の性格特性や課題については基本的に関与しないということです。
心理や福祉職の分野では、スーパーバイズはよく行われている印象がありますが、キャリアの分野では、まだまだ受けている方は少ないのではないでしょうか。
ただ、現場では、自分のやり方に固執して面談している方や、この対応でいいのかと不安を抱えながらも面談をこなしている方を見かけます。キャリアコンサルタントの慢心や不安は、キャリアコンサルタントのスキルアップにならないだけではなく、相談者によくない影響を及ぼしてしまう危険性も孕んでいます。
自身のキャリアコンサルティングを振り返り、客観視できるようには、定期的にスーパーバイズを受けることが必要。しかし、まだまだ、気軽に受けられるシステムが確立していない現状も感じます。
東京や大阪など都市部では学会などが主催するスーパーバイザーの養成講座も行われるなど、スーパーバイズを行える指導者もいらっしゃいますが、地域の格差はどうしてもあります。
キャリアコンサルティング協議会が行なっている「技能士の窓」でキャリアコンサルティング1級所持者を探してみるのも一つの方法です。
まとめ
今回は、簡単にですが、キャリアコンサルタントのスキルアップについてまとめました。kの方法以外にもスキルアップの方法はありますが、大切なことは、学ぶだけ、実践するだけ、にならないよう、両方をバランスよく行なっていくことで、スキルの向上はより見込めるのではないでしょうか。