就職対策講座のあり方

就職対策講座とは

今週は、大学生3年生向けの面接対策講座をおこないました。3月1日からいよいよ2019年卒の就職活動が解禁になるにつれて、学生たちの意識は高まってきています。

それに伴い、毎年のこの時期(2月〜4月)は面接の対策講座や学生面談の仕事の依頼が集中し、多くの学生さんとお会いしてお話しします。

そのなかで感じるのが、面接やグループディスカッション、就活マナーなど、各種就職活動対策講座の弊害です。

本来、就職活動支援は、学生が、不安を抱えながらも、その不安を原動力として、社会人としてのキャリアを歩める準備のお手伝いだと考えています。

学生たちが、いかに自分の足で歩いていけるか、そのために周りの大人に何ができるのか、何をするのか、何をしないのかを、このような仕事に関わる方はあらためて考えはみませんか。

いたずらに不安だけを煽っていないでしょうか

「エントリーを100社以上しないと内定は取れない」

「インターンシップに参加していない学生は遅れている」

「この時期に履歴書も書けていないとついていけない」

「そんな自己PRではどの会社でも通用しない」などなど。

学生にもっと動いて欲しいという想いから、危機感を与えてお尻に火をつけ行動させようと上記のような投げかけばかりをしていないでしょうか。

私もよく口にしてしまい、後から反省します。気づくと相手を否定してばかり。できていないことばかりを指摘していると、学生たちの表情から笑顔は消えていきます。それなのに、面接で「もっと笑顔に!」「第一印象をよく!」と伝えても、それは表面上の作られた笑顔でしかなく長続きしません。

もちろん、危機感から行動していい結果につながる人も一定数はいます。ただ、これまで私が接してきた学生の大半は、不安が先行して、委縮し、逆に行動が消極的になってしまっていることの方が多いように感じます。

以前、これから就職活動を始めようとしている学生が相談に来て、「セミナーで聞いたような大変な思いをして、就職をして、その先に何があるんですか。」と第一声口にしました。

自分が正しいと思って行ってる働きかけは、目の前の学生にとって有意義なものであるでしょうか

学生の経験の機会を奪っていないでしょうか

学生が持って来た履歴書を、真っ赤に書き直していませんか?

学生の代わりに、企業に訪問のアポイントの電話をしていませんか?

面接の応答を一言一句作って渡してはいませんか?

就職活動は、ビジネス文章の作成や電話でのアポイント、企業への訪問など、社会人生活に必要なスキルを身につける訓練の「機会」がたくさんあります。その機会をこちらが奪ってはしないでしょうか。

良かれと思って行っていることが、実は相手の成長の機会を奪ってしまっているということは、なかなか気づかずによくある事ではなかと思います。

私も先日、学生向けの企画の広報チラシを作成した際に、集合場所までの経路や公共交通機関の時間までを事細かく調べ掲載しました。しかし、後から考えてみると、「一度自分で調べて、わからなかったら聞きに来ましょう」程度でよかったのかもしれません。事細かに記載する事で、学生が自分で調べる機会を奪ってしまったのです。

自分が良かれと思って行ってる働きかけは、目の前の学生の成長の機会になっているでしょうか

まとめ

学生の支援に関して正解はありません。学生の状況や性格、価値観、目指す進路などは本当に様々で個別性があり、「学生はこうだ!」と一括りにできるものではありません。そのため、支援の方法は多数あればあるほど、学生たちの選択肢も増え、よりその学生が望むキャリアに近づくのではという見方もできます。

しかし、キャリア支援の原理原則は、どのような学生に対しても共通する事であり、もっと言えば、学生だけではなく全てのキャリア支援のベースになります。そのことを理解していることを示すために、キャリアコンサルタントが名称独占の国家資格として認められるようになっったのだと私なりに考えています。

就労の支援は、各自の社会人経験からでも行えることもあるかもしれません。でも、国家資格化し、登録制度や更新制度が必要になったということは、個人の経験のみでキャリアの支援を行うことの弊害や危険性が出て来ていたのではないでしょうか。

もちろん、資格をとったからといってそこで支援ができるという訳ではありません。国家資格の取得はあくまでもスタートであり、ゴールではありません。

資格の種類は異なりますが、教員が無免許で教員を名乗り授業を行うことは認められません。車の運転がどれだけ上手にできたとしても、免許なしで公道を運転することは法律に反します。自動車工場で、無資格の作業員が検査をしていたことが問題になりました。キャリアコンサルタントの仕事も、人の人生に関わる大切な仕事です。自身の経験や感覚のみでは相手にも自分にも危険が伴います。

ただ、学生向けの就職活動支援の現場では、まだまだ、キャリアの原理原則とは関係なく、それぞれの経験のみで、支援が行われていることも現状としてあります。

今後は、資格の認知度や、有用性、必要性をもっと社会に感じてもらえるよう、私自身も研鑽をつみたいと感じた一週間でした。

<参考まで>

キャリアコンサルタント更新講習で、大学生支援をテーマに講座を開催しています。関心がある方はこちらから詳細を確認ください。

http://www.yuukyu.jp/service/service-05/sec-1/