フリーランスの働き方 〜その六、課題〜

フリーランスの課題は

前回は、フリーランスのメリットについてまとめました。今回はこの働き方の課題についてです。自由が効いて、裁量があり、やり方次第では自分が望む生活を手に入れやすい働き方ですが、もちろん課題もあります。安易に考え、フリーになってみたけど、思っていた以上に大変で立ち行かなくなってしまう方もいらっしゃいます。やりながら見えてくる課題も多いですが、事前に準備しておけば「こんなはずじゃなかった」を防げることもあるかもしれません。

今回は、私なりに課題をまとめてみました。ただ、メリットと同様に、どんなことを課題だと感じるかは、人それぞれです。また、生業によっても異なる部分もあります。

  • スケジュール管理
  • 代わりがいない
  • 法に守られていない
  • 全て自分でこなす

スケジュール管理

身一つのフリーランスで働いていて一番苦労しているのは、依頼いただく仕事のスケジュール調整です。同じ日に複数の案件が重なると、物理的にどうしても受けられません。

この5年間でも、せっかくお声がけいただいたにも関わらず、お断りせざるを得なかったご依頼がいくつもあります。かと思えば、仕事の予定が入らずにスケジュールが空いてしまう日も出てきます。

企業で働いていれば、極端に言うと、閑散期などで仕事がなくても給料はもらえます。職場に行って、ただ座っているだけでも、インターネットを見ているだけでも賃金は発生します。フリーランスは、サービスや成果物を提供して初めて収入になります。

そのため働いてなんぼの世界。何もしていない時間は、収入もありません。スケジュールの空きは無収入なのです。この機会損失は、金額にすると決して少なくはありません。

代わりがいない

これは、フリーランス全体に当てはまるというよりは、フリーのキャリアコンサルタントに特に当てはまるのではないかと思います。

私の仕事は、私に依頼をいただき、私に面談や研修を務めて欲しいという場合が多いです。そのため、穴を開けることが許されません。約束の日時に、その場所に行き、私がその仕事を行わなければならないのです。今日体調が悪いのでお休みしますというわけにはいきません。

恥ずかしながら、独立1年目にインフルエンザにかかりました。幸い、仕事が立て込んでいる時期ではなく、休みと重なったこともあり、仕事をキャンセルすることなく済んだのですが、体調管理、健康管理は気をつけなければと学びました。

会社員の時のように、有給があるわけでなく、ピンチヒッターがいるわけでもありません。ある程度、前もって分かれば、調整することも可能な場合もありますが、直前の変更は難しい生業です。

法に守られていない

これは、フリーランス全般に当てはまります。現在の労働基準法では、法の対象を「労働者」としています。

「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

労働基準法第9条

また、労働安全衛生法や労働契約法、最低賃金法など、労働関係法規の「労働者」の定義は、労働基準法第9条の定義に準じています。フリーランスは、業務請負契約で働く場合、法でいう「労働者」に該当しないため、労働関係法の適応外になります。

ということは、最低賃金はなく、有給もなし。産休育休の制度も使えず、労働時間や休日の上限もありません。(契約は請負でも、実態として使用者との従属関係があれば、労働者として認められる場合もあります。)

もちろん、社会保険の加入もないため、健康保険や年金は自分で管理して支払わなければなりません。年金も、厚生年金加入者であれば、雇用主が半分払ってくれています。しかし、フリーランスの場合は、国民年金となるため老後のことを考えると、国民年金基金や確定拠出年金など自分で設計して資産運用を考えていかなければ、おそらくは将来の生活が立ち行かなくなる可能性が高くなります。

さらに、社会保険加入者であれば、病気や怪我で働けなくなった時に、傷病手当金として、休んでいる間の給与が100%でないにしろ保障されます。しかし、国民健康保険に傷病手当金はありません。働けなくなった時には、すぐさま収入は途絶えてしまいます。そうならないために、個人で生命保険等を活用して、いざという時に備えなければなりません。社会保険と同様の保障を他の民間の保険商品で受けようした場合、個人の方が費用が間違いなく高くなります。

この辺りは、今後、雇用によらない働き方が増えていこうとする社会では、見直しの必要が出でくるかもしれません。

全て自分でこなす

フリーランスは、基本は身一つ。ひとりで会社を切り盛りしている様なものです。本業の他に、営業も、広報も、経理も、総務も、人材育成も、全て自分が行います。そのため、本業に関する知識・能力だけではなく、総合的な能力が必要になります。確定申告や、社会保障制度など、知らなかったではすまされないこともあります。

<必要と感じた能力・知識>

・会計|確定申告を行うため。簿記の仕組みや売上の管理、決算の手続きなど。

・法務|契約手続きのため。契約内容の検討や、契約書の取り交わしなど。

・広報|事業周知のため。サイトの制作や運用、SNS、ブログの活用、SEO対策など。

・営業|新規案件受注や価格交渉のため。他社の動向や、自身のブランディングなど。

・人材育成|自身の研鑽のため。研修の情報収集や、計画的、戦略的な受講。

これらは、外部に委託して専門家へお願いする方法を取ることができます。経理は税理士さんに。広報はサイト作成業者になど。営業も、最近は業務委託で請け負ってくれる方もいらっしゃいます。また、クラウドワークを使ってもいいかもしれません。

しかし、依頼するということは、費用がかかります。内製化して費用を抑えるのか、外注して本業に集中するのかはその人次第ですが、本業以外にもやらなければならないことはたくさんあることを覚えておかなければなりません。

まとめ

今回は、私の視点からの課題でしたが、中小企業庁が行なったフリーランスの実態調査では、他にも事業開始時の顧客の確保や資金調達、収入の不安定さや、家庭との両立が上がっています。

こちらも参考にしながら、自分なりの課題を想定して、準備を行われてはいかがでしょうか。

2015年版小規模企業白書「フリーランスの実態」